症例紹介

肩こりを考える…

臨床の現場に就くこと20年以上。その間、お会いした多くの患者様のほとんどが、程度の差はあるにせよ、肩こりの症状を自覚しておられました。それほど肩こりを訴える人が多くいらっしゃるにも係わらず、実のところ患者様も私たち治療家も、肩こりを本当に正しく理解することが出来ていない為に、しっかり治すことが出来ずにいるのです。

肩こりをひもとくと、とても奥が深いことがわかります。たとえば、肩こりの解釈の仕方。ある先生は、肩こりと言う病気はないと言います。また別の先生は、肩こりは万病の元と説きます。さて、どちらが正しいのでしょう?答えはどちらも間違いではないと言うこと。なぜなら、肩こりとは…症状(今、身体に起きている不快現象)を指す言葉であって、その原因となる機能障害や病気については、多種多様なケースが考えられるからです。
肩こりから解放される為には、その仕組みと原因を正しく理解することが重要になってきます。

肩こりとは?

肩こりとは、首や肩の周辺筋肉が、何らかの原因により「緊張」や「こわばり」が生じることで、筋肉のユニット内で血行不良が起き、結果、痛み・だるさ・凝り・張り等の症状を感じる状態になった時、「肩が凝る」と私たちは認識することになります。

血行不良を起こす原因としては、様々なものが考えられますが、大きく2つに分類することが出来ます。

それぞれについて、さらに原因となる因子を細分化することが出来ます。

1.筋肉に問題がある場合

A:炎症
打撲や挫傷などの外傷により、筋膜が癒着や緊張し、筋肉の内圧が上がり、循環障害を起こすことで、疲労物質が筋肉内に滞り、肩こりの症状として現れるケース。(按摩やマッサージ後に起こる痛みも、外傷性の炎症であり、肩こりの原因のひとつとされます)

B:癒着
冷えや圧迫等により、筋膜が癒着や緊張し、筋肉の内圧が上がり、循環障害を起こすことで、疲労物質が筋肉内に滞り、肩こりの症状として現れるケース。(下着や衣服等による圧迫もこのケースに当てはまります)

C:疲労
肩や首の筋肉を連続して使うことで、筋肉そのものが疲労した結果、肩こりの症状が起きるケース。

2.正常な筋肉が外部からの神経的影響を受ける場合

A:姿勢
肩こりの原因で最も多いのが、間違った姿勢によるものです。生活習慣、歩行、スポーツ、仕事などの様々な要因が関連し、その人特有の不良姿勢を生み出します。その人にとっては不良姿勢が当たり前であり、その姿勢を保つ為や代償する為に、特定の筋肉が継続して緊張を強いられることになった結果、肩こりを誘発するケース。

B:歯科的な問題
咬合不良や虫歯、歯周病等が原因となるケース。

C:眼下的な問題
視力の左右の違い、緑内障、炎症性の眼科疾患が原因となるケース。

D:整形外科的な問題
頸部椎間板ヘルニア・変形性頸椎症・脊柱管狭窄症・脊髄の腫瘍・脊髄損傷等が原因となるケース。

E:内科的な問題
あらゆる内科の疾患および、内臓の機能低下等が原因となるケース。

F:その他の問題
ストレス、うつ(鬱病)、老化等が原因となるケース。

B〜Fのケースでは、脊髄神経の反射や交感神経を介し、首や肩の筋肉を継続的に緊張させてしまっています。その結果、筋肉の内圧が上がり、循環障害を起こすことで肩こりという症状が現れます。また、神経反射は、痛みを特定の筋肉に起こす作用もあります。

肩こりの一般的な治療法とは?

肩こりの治療法としては、マッサージ・指圧・整体・カイロプラクティックなどがあり、様々な取り組みが為されています。反面、果たして本当の意味で治せている処がどれほどあるでしょう?

治療中は、気持ち良くて治った気がしていたのに、すぐに元に戻ってしまう…このような感想を持たれる患者様は少なくありません。

肩こりが生じている筋肉に対し、揉む、温める、などを行い、疲労物質を強制的に筋肉外に出す方法や、叩く、電気を流す、ハリを刺す、強い磁気をあてがうなどにより、筋収縮が上手く出来ない状態にしてしまうことで、肩こりを緩和する方法などが一般的に行われています。筋弛緩剤を用いた治療を行うところもあるようです。

これらの治療法は、一時的ではありますが、確かに痛みや凝りをほぐし、肩こりをラクにしてくれますが、根本となる原因に対し、何ら確かな改善策を講じてはいません。ただ、肩こりを感じている筋肉への対処療法を施しているだけに過ぎないのです(真の原因を探ることさえ怠っている処もあります)。

肩こりは、多くの場合、複数の原因が重なり、その人特有の症状として現れると述べましたが、複合された原因の全てをしっかりと見極め、それぞれに対して適切な方法の施術を行うことが不可欠です。その為には、日々患者様と真摯に向き合い、様々な知識を高めながら、原因追究の姿勢を貫くことが大切になってくると、ナチュラル・キュアは考えています。

当院の肩こりへの取り組みとは?

私たちの診断・施術は、まず、患者様に『コリを感じる部分を手で触ってみてください』と聞いてみることから始まります。すると患者様は、特長的な方法(揉む・叩く・押し込む・擦る・さする等)で、色々な部位を示してくれます。
たとえば…

  • 首から肩をさするように広く示す
  • 首から背中をさするように示す
  • 首の上の筋肉を揉みながら示す
  • 首と肩の間の一ケ所を押し込むように押さえて示す
  • 肩甲骨の間を縦にこするように示す…などなど

言葉にすると同じ“肩こり”でも、それぞれの患者様が示す部位は実に様々です。また、よく観察していると、患者様が言葉で伝える部位と実際に手を使って指し示す部位が異なる場合もよくあります。患者様がどこをどのように指し示すか…によって、次のことをある程度知ることが出来るのです。

1)関連する部位
2)原因となる部位

また、患者様が指し示した部位と状態を再確認し、私たちとの間で“共通の理解”得ることにより、肩こりを感じている筋肉の原因を特定するためのモニターポイントにすることが出来ます。

次に、患者様が示した筋肉(部位)に損傷がないか、過去の怪我のキズやお灸の跡、手術後の瘢痕等が近くにないか、触診という方法で観察します。筋肉を軽く触診することで、皮下の癒着や瘢痕、熱感、筋肉の過緊張・萎縮等、筋肉の状態が分かります。この段階で問題が見つかれば、状態に合わせて施術することになります。

肩こりを感じている筋肉そのものに問題が無いと判断した場合は、他の部位に肩こりの原因が潜んでいることになります。その原因を見つけるには、モニターポイントが重要になります。

多くの治療院では、対処療法的に、肩こりの部位を揉んだり叩いたり、電気を流したり薬を使ったりして、モニターポイントを消そうとする為、本来の原因を見つけ出すことが出来ずにいます。この為、いつまで経っても肩こりが改善されないのです。

正しいモニターポイントの使い方とは?

それでは、モニターポイントの正しい使い方を説明します。
初めに、肩こりを感じている部位(筋肉部分)を軽くつまんでみます。その時、患者様がどのように反応するかを確認します。肩の筋肉が正常な状態であれば、「軽くつままれた」とだけ感じるはずですが、それ以外の感覚…たとえば、「痛い・だるい・引きつる・こっている・痛気持ちいい」等の反応を示した場合は、筋肉が異常な感覚を示している状態にあると考えます。

筋肉自体が問題を引き起こしていないことはすでに調べて分かっていますので、それ以外の他の部位からの神経反射によって異常な感覚が引き起こされていると推測されます。その原因となっている部位を見つけ出し、正常に機能するように持っていければ、速やかに肩の筋肉が正常化するはずです。

肩こりの原因が、内科的な問題(機能低下ではなく病的状態)もしくは、手術が伴う整形外科的な問題であった場合は、専門医による正しい治療で解決する必要があります(内科的・整形外科的な問題が肩こりの原因である場合、治療が上手く進めば肩こりは消えていくはずです)。

姿勢と歩行が肩こり解消のキーポイント?

手技による施術で肩こりを解消しようとする私たちは、内科的・整形外科的な問題以外の原因から生じる肩こりに取り組むことになります。その中でも、肩こりに最も影響が出やすいのが、「姿勢と歩行」です。多くの場合、いくつかの原因が重なって肩こりが生じますので、肩こりをモニタリングしながら、姿勢の崩れた部位を正常な方向へと戻し、動きや位置関係の悪い関節を正常な位置へと導くと、肩こりの軽減する部位がその場でいくつも出現します。

肩こりが軽減する部位を出来る限りたくさん見つけ出し、優先順位を決めてそれぞれの部位に適した手技で施術します。優先順位と手技の選択が正しければ、全ての問題となる部位を施術することなく、肩こりは解消して行きます。施術の対症となった部位が、どのようなメカニズムで問題を引き起こしたのかを考察・検証することで、肩こりの再発を防ぐことが可能になります。

このように肩こりは、その場だけラクになるような対処療法で紛らわしていたのでは改善されることはありません。肩こりは、身体が示してくれる貴重な情報です。気持ちが良いからと言う理由だけで揉みほぐすことに専念すると、モニターポイントを台無しにするだけです。

モニターポイントをしっかり見極め、正しく利用することが、患者様の抱える様々な問題やメカニズムを知ることに繋がります。その問題をひとつひとつ確実に解決して行くことで、患者様の身体全体の状態もどんどん良くなり、結果として肩がこらなくなるのです。